きみの愛なら疑わない
「すき……です……」
私の声が震えているのは隠せない。
「過去から逃げたいです……浅野さんを傷つけたことを上書きしたい……」
あの時の後悔から逃げたいと思ったことも嘘ではない。あなたに愛されたら、全部なかったことにできるって思わなかったわけじゃない。ずるい心は常にあった。
「自分を悪者にしないように、ずっと今日まで隠してきました。そこまでしてでも望んだんです……」
どうして再会してしまったの……こんなことなら出会わなければよかった。あなたの存在の大きさを知らない方が楽でいられたのに。
「浅野さんと離れたくないです……」
こんなに好きになってしまった。気持ちは変わらない。あなたが離れていくのが辛くて、好きだという心は変えられない。
「しつこいを通り越して呆れるよ。その図太さに」
「…………」
「美麗の友達だけあってそっくりだね」
スーッと涙が頬を伝う。
この人は私に対して完全に壁を作った。
「僕はもう終わりにするよ」
浅野さんは車のドアに手をかけた。
「ごめんなさい……」
もうそれしか言えない。そんな言葉はうんざりだろうけど、何でもいいから言葉をぶつけてこの人をどうにか引き留めたかった。
「足立さん気づいてた? 僕が君に好きだとか愛してるとかを一度も言わなかったことを」
気づいていた。キスをして抱き合って、気持ちが通じていることは感じたけれど、彼からは一度も気持ちを言葉で表してくれることはなかった。
「言うのが怖かったんだ。言ったら本物になる。その覚悟がまだできなかった」
浅野さんの手で車のドアが開かれた。