きみの愛なら疑わない
「あんなこと?」
浅野さんは私の手を強く引いた。とても弱っているとは思えないほどの力で。胸の上に倒れこむように私の上半身が覆い被さった。
「こんなことだよ」
浅野さんに体が密着する。着ている服の上からでも分かるほど体が熱い。
「本当にこんなことをしたんですか?」
「したよ」
浅野さんは私の腕を掴んだ反対の手で頭を撫でて髪をすいた。頭を少し上げて私の額にキスをした。
「こんなこともしたんですか?」
「そうだよ」
これではまるで付き合っていた頃と変わらない触れ合いだ。
「君の名前を呼んでも反応が薄いから、よく見たら今江さんだったんだ」
意識が朦朧とするとは恐ろしい。
「今江さんも抵抗しなかったからね……あの子も意外と大胆だよ」
「そんなの、抵抗しないに決まってます」
今江さんもその状況を狙って行ったのかもしれないのに。
「浅野さんからも私にこんなことをするんですね」
「…………」
「私の優しさが苦しいなんて言っておきながら、私が来るのを待っていたんですか?」
「消えないんだよ。君のことが頭から離れない」
荒い息と共に苦しそうに言葉を吐き出した。
「君を憎めたらどんなに良かったか……」
「憎まれて当然です……」
ほんの一時の間好かれたことだけでも奇跡だった。
「だめだった……どんな女の子と会っても、足立さんが頭に浮かんじゃう……」
「またセフレと会ってるんですか?」
「僕には軽い付き合いがお似合いなんだよ……」
「バカみたい」
私は浅野さんの胸の上で呟いた。
「浅野さんに本気で思いを寄せる子がいたら、自分とそんな付き合い方をされたら傷つきます。みんながみんな美麗さんのように軽い女だと思わないでください」
「…………」