きみの愛なら疑わない
「浅野さんももっと自分を大切にしてください」
もう一度真剣に誰かと向き合って。体だけ、上辺だけの付き合いをするなんて浅野さんには不釣り合い。本当は愛情深い人だって私は知ってるから。
「仕事も、無理しすぎです。だから倒れるんですよ」
「本当に君は……」
浅野さんの両腕が私を抱いた。
「ずるいのか優しいのか分からない……」
「浅野さんにだけはずるくもなるし優しくもなるんです」
「僕だけ?」
「浅野さんだけです。私が感情を揺さぶられるのはたった一人」
耳元で浅野さんがフッと短く息を吐いた。
「そうやって僕だけに一喜一憂する、真っ直ぐで一途で可愛い君に惹かれたんだよ」
その言葉を聞いて浅野さんのシャツをぎゅっと握った。
「浅野さんは私を振り回しすぎです……」
「それは僕のセリフだよ。君には振り回されっぱなしだ」
浅野さんが深く息を吐いたから胸が上下する。
「君のせいで怖いんだ」
「え?」
「好きになりすぎて離れてしまうのが怖い。またいつか僕は捨てられるんじゃないかって……」
不安そうな顔をして私を見つめ返す。
「私はずっと浅野さんが好きだった。入社したときよりも前から。婚約されていた頃から……」
あなたと美麗さんが結婚してしまうのが辛かった。だから結婚式を壊してしまった。
「ごめんなさい……もしも……もしも、許してくださるなら、私は……」
「美麗が僕を捨てたのは君のせいじゃないよ」
浅野さんは私の言葉を遮って話し始めた。
「君が何もしなくても、美麗とはきっと長くなかった。妊娠したことだって、いずれ僕の子じゃないことはわかるから。君は自分が結婚式を壊したと思っているかもしれないけど、最終的に僕じゃない男を選んだのは美麗だよ」