きみの愛なら疑わない
焦らせたりしちゃいけない。今までとは違うんだ。浅野さんは私のことを大事にしてくれてるってちゃんと伝わるのに。
「食事よりも大きな問題があるよ」
「何ですか?」
「もう足立さんを抱く機会が減る」
「はい?」
浅野さんの唇が私の右耳を優しくかじった。
「あっ、ちょっと浅野さん!」
唇が啄むように耳を犯して徐々に首へと下がってくる。手がシャツのボタンを外し始めた。
「浅野さん! ご飯が……鍋に火がついてますから……」
「じゃあそっちは後」
浅野さんの手がコンロの火を消すとそのまま私の膝の裏に腕を入れて一気に持ち上げた。
「わっ! 浅野さん!」
両腕で横抱きにされキッチンから連れ出される。
「浅野さん!」
こうやって運ばれることに慣れないから浅野さんの首に腕を回してしがみついた。
「夕食よりも先にこっち」
寝室のベッドに下ろされるとそのまま夕食のことなんて忘れてしまうくらいに浅野さんに体中を撫で回され、お互いに甘い吐息が混ざり合う。
このまま浅野さんと一緒に居たい。離れたくない。でもそれを言ってこの人の重荷にはなりたくない。
◇◇◇◇◇
「ありがとうございました」
店員に見送られてオフィス街の一画にある花屋から花束を抱えて出た。
花束は黄色やオレンジ色が中心で丸みがある。
浅野さんに渡すために用意したこの花束はイメージとは真逆で可愛らしい。前もって注文した今江さんがきちんとイメージを伝えなかったのかもしれない。
このまま浅野さんの送別会をやるお店に歩いていく。ブックカフェの前を通るとウェルカムボードを書き換える優磨くんがいた。
「あ、美紗さん!」
「お疲れ様」