きみの愛なら疑わない

「慶太にもう美麗を好きになれないって言われたの。わざわざ美麗の家に来て親の前でもそう言った」

「え?」

知らなかった。浅野さんはいつの間に城藤の家に行ったのだろう。

「もう慶太に関わっちゃだめだって。親にも優磨にも言われたの。でも美麗には慶太だけなの」

「できません……浅野さんを美麗さんには会わせられません……」

私の声は震えていた。目の前の華奢な女が怖かった。この人は何を仕出かすのか分からない。

「美麗を幸せにできるのは慶太しかいないの」

「それは違う……」

「慶太なら美麗を守ってくれるの。消えたりしないの。裏切ったりしない……」

「それは美麗さんが言う言葉じゃない……」

消えたのはどっちだ。裏切ったのは誰だ。

この人はいつも誰かに求めるだけで、自分からは何も与えない。幸せにしてほしいと願うばかりで周りを不幸にしていく。

「美紗ちゃんが美麗をこんなにしたくせに!」

突然叫んだ美麗さんに驚いて通行人が私たちを見て不審な顔をして通りすぎていく。

「美紗ちゃんが邪魔しなければ慶太と赤ちゃんを育てていけたのに! 今だって幸せでいられたの! 慶太に愛されなかったから赤ちゃん死んじゃった! 美麗ばっかり傷ついて!」

言っていることが支離滅裂だ。鳥肌が立ってきた。

「全部美紗ちゃんのせいなんだから!」

叫びながら美麗さんが一歩後ろに下がった。

「美麗は美紗ちゃんが羨ましかった。自由で、何でもできて、好きな人と一緒になれて……」

それは違う、と美麗さんの言葉を遮った。

「羨ましかったのは私の方です……」

優れた容姿、欲しいものは何でも手に入る家庭環境、努力しなくても開けた未来が。

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