きみの愛なら疑わない

「ゆうまくん……」

「ここは病院ですよ」

「病院……?」

視界がはっきりしてきて見回すと確かに病室のようで、私はベッドに寝かされている。

「浅野さん……起きたいです……」

「まだ無理しない方がいい」

顔を上げた浅野さんが心配そうな声を出したけれど「大丈夫です」とベッドに手をついて体を起こした。浅野さんは私から体を離しても手を添えてくれた。

「私、何があったんですか?」

「君は美麗を庇って車と接触したんだ」

「え! それは……びっくりです……」

必死だったから状況を理解できない。自分がここにいることも他人事のように感じた。

「それはこっちのセリフだよ。連絡がきたときは驚いた」

まだはっきりしない頭で記憶をたどり、美麗さんのことを思い出した。

「美麗さんは? 無事ですか?」

「…………」

「大丈夫です。今は家にいます。親と使用人がしっかり監視してるので」

浅野さんは黙ったまま、私の質問には優磨くんが答えてくれた。

「そう……よかった」

「よくない! どうして無茶をするんだ君は!」

突然の大声に体を震わせた。

「骨にヒビが入っただけで済んだからよかったものの、車とまともにぶつかっていたら死んでたかもしれないんだよ!」

浅野さんの顔は真っ赤で、目も潤んでいるような気がする。

「すみません……」

骨にヒビ……だから激しい痛みを感じたわけだ。今左足は固定されて簡単には動かせそうにない。痛みで気を失うなんて恥ずかしさが込み上げる。

「まぁまぁ慶太さん、美紗さんは姉を助けてくれたわけですし」

「それでも足立さんが怪我したら意味がないんだ……」

浅野さんは眉間にシワを寄せて苦しそうに呟いた。

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