きみの愛なら疑わない
「優磨、足立さんと二人で話したいんだ」
ずっと黙っていた浅野さんが口を開いた。
「あ、はい、すいません。詳しいことはまた連絡しますから」
浅野さんが無表情なことに慌てて優磨くんは病室から出ていった。
二人きりになっても病室は静かなままだ。
「浅野さん?」
「どうして美麗の心配までするんだ!」
「え、あの……」
突然怒りだした浅野さんに戸惑った。
「優磨から連絡が来たときどれほど心配したか!」
浅野さんの目は完全に潤んでいる。今にも涙が溢れそうなほどに。
「ごめっ、ごめんなさい……だって……」
私も涙が急に溢れ出て嗚咽を堪える。
「もし美麗さんが死んじゃったら浅野さんは一生苦しむから」
「…………」
「浅野さんには幸せになってほしいんです」
自分のせいで人が死んだとしたら、浅野さんが悪いわけじゃないのに苦しみ続ける。そんな重荷を背負う必要なんてないから。
浅野さんの腕が私を包んだ。
「足立さんが死ぬかと思ったよ」
ベッドに腰かけ私の肩を抱いて首に顔をうずめた。
「僕のそばから離れないって言っただろ」
「はい……」
私も腕を浅野さんの腰に回した。
「君がもう目を覚まさないかもなんて思ったら……」
骨にヒビくらいで大袈裟だ。それでも浅野さんにとっては大変なことなんだ。
「ごめんなさい……」
私は何度も何度も浅野さんを不安にさせる。
「いなくなったりしませんから」
「ちゃんと信じさせてよ」
「はい……」
浅野さんが顔を上げたから私も顔を横に向けて目を閉じた。そうして優しく重なった唇は熱くて、触れた頬は浅野さんの涙で濡れていた。