きみの愛なら疑わない
私はご両親に結婚式に匠を乗り込ませるきっかけを作ったことを正直に話して詫びた。
ある程度優磨くんから事情を聞いていたのだろう。ご両親は私を責めることなく優磨くんと同じように「遅かれ早かれ結果は変わらなかった」と言ってくれたことに救われる。
最後にもう一度美麗さんと話がしたかった私は監禁に近い状態だという美麗さんの部屋の前まで案内された。
あれから更に部屋に引きこもりがちになり、以前のような明るさがなくなってしまったという。
浅野さんは美麗さんが自分で選んで行動した結果だから放っておけばいいと言ったけれど、私は最後にどうしても伝えたいことがあった。
監視されているとは聞いていたけれど部屋には鍵がかけられているわけでもなく、中からも音楽が聞こえ美麗さんの動く気配がする。漏れ聞こえてくる曲はKILIN-ERRORのデビュー曲だ。それは過去に匠が美麗さんをイメージして作った曲をアレンジしたものだ。
今も美麗さんは一人で苦しんでいることが堪らなくてドアをコンコンとノックした。
「美麗さん……美紗です」
「…………」
中の音楽が止んだ。美麗さんの返事はない。でもそれは予想していたことだ。
「あのとき無事でよかったです。美麗さんに怪我がなくて」
「…………」
美麗さんの返事は期待しないでドアの外から話し続けた。
「ごめんなさい」
私は最後まで美麗さんの味方になれなかった。美麗さんのために心を砕くことができなかった。悪意を向けてしまった。
「それでも美麗さんと過ごした時間は楽しかった」
ワガママで非常識なことばかりやっていたけれど、いつの間にか私は笑顔になっていたから。大学生活で思い出すのはいつも美麗さんとの時間だった。
「ありがとうございました」
朝まで飲んで騒いで、楽しかった時間だって存在した。友達だと言える関係だった。
私にないものを持っていた美麗さんが羨ましくて大嫌いで、大好きだった。