きみの愛なら疑わない
「もうっ……だめですよ。まだ荷物も出しきってないし、ご飯も作るんですから……」
浅野さんの手は服の上から私の体を撫で始める。抵抗しようと体を捻ると腰を抱かれてキスをされる。
体がゾクゾクして足に力が入らなくなり、崩れ落ちそうになると浅野さんの腕が腰を支える。
「浅野さんっ……」
「まだ浅野さんなの? 君ももうすぐ浅野になるのに」
入籍したら私は『足立美紗』から『浅野美紗』になる。分かってはいてもまだ浅野さんと呼んでしまう。
「美紗」
耳元で名前を囁かれ、その色気を含んだ声に思わず体が震える。
「浅野に慣れるまで思い知らせるよ」
そう言うとキスをしながらゆっくりベッドルームへ移動し始める。唇を重ねながら転ばないようにぎこちなく足を動かす。
抵抗したいのに手が服の上から胸を包むから力が入らなくて、どんどんベッドに追いやられていく。
「だめです……」
「何で?」
「何でって……まだ夕方ですし……」
「じゃあ夜ならいいの?」
そう言われて返す言葉がない。
「理由がないなら今から存分にくっつくよ」
ベッドに押し倒され浅野さんが私を跨いだ。
「浅野さん!」
「だから、浅野さんじゃないでしょ」
「でも……」
抵抗する間もなく慣れた手つきで服を脱がされ、手が直に素肌に触れる。
「君の名前は?」
「あっ……浅野美紗ですっ……」
胸に顔をうずめる浅野さんに体をよじりながら精一杯言葉を出す。
「僕の名前は?」
「慶太さん……」
「君の何?」
「旦那さん……ですっ……」
唇が肌に吸いつく感触に身悶える。
「もっと名前呼んで」
「慶太さんっ……」
名を呼ぶと舌が絡まる深いキスが止まらない。
「美紗……愛してる」
「私も……慶太さんを愛してます」
キスの合間に言葉を絞り出す。体の隅々まで熱に支配されていく。
私の全部はあなたのものです。ずっとそばにいます。
だから、ずっとそばにいてくださいね。