きみの愛なら疑わない

「もうっ……だめですよ。まだ荷物も出しきってないし、ご飯も作るんですから……」

浅野さんの手は服の上から私の体を撫で始める。抵抗しようと体を捻ると腰を抱かれてキスをされる。
体がゾクゾクして足に力が入らなくなり、崩れ落ちそうになると浅野さんの腕が腰を支える。

「浅野さんっ……」

「まだ浅野さんなの? 君ももうすぐ浅野になるのに」

入籍したら私は『足立美紗』から『浅野美紗』になる。分かってはいてもまだ浅野さんと呼んでしまう。

「美紗」

耳元で名前を囁かれ、その色気を含んだ声に思わず体が震える。

「浅野に慣れるまで思い知らせるよ」

そう言うとキスをしながらゆっくりベッドルームへ移動し始める。唇を重ねながら転ばないようにぎこちなく足を動かす。
抵抗したいのに手が服の上から胸を包むから力が入らなくて、どんどんベッドに追いやられていく。

「だめです……」

「何で?」

「何でって……まだ夕方ですし……」

「じゃあ夜ならいいの?」

そう言われて返す言葉がない。

「理由がないなら今から存分にくっつくよ」

ベッドに押し倒され浅野さんが私を跨いだ。

「浅野さん!」

「だから、浅野さんじゃないでしょ」

「でも……」

抵抗する間もなく慣れた手つきで服を脱がされ、手が直に素肌に触れる。

「君の名前は?」

「あっ……浅野美紗ですっ……」

胸に顔をうずめる浅野さんに体をよじりながら精一杯言葉を出す。

「僕の名前は?」

「慶太さん……」

「君の何?」

「旦那さん……ですっ……」

唇が肌に吸いつく感触に身悶える。

「もっと名前呼んで」

「慶太さんっ……」

名を呼ぶと舌が絡まる深いキスが止まらない。

「美紗……愛してる」

「私も……慶太さんを愛してます」

キスの合間に言葉を絞り出す。体の隅々まで熱に支配されていく。

私の全部はあなたのものです。ずっとそばにいます。
だから、ずっとそばにいてくださいね。



< 163 / 164 >

この作品をシェア

pagetop