きみの愛なら疑わない

(恵まれた女と恵まれない女)

◇◇◇◇◇



城藤(しろふじ)美麗(みれい)を一言で言うと『全てを持っている女』ということに尽きる。
城藤財閥といえば企業グループが不動産、貿易などに進出した大財閥の一つ。城藤に関連した商品や施設を目にしたことのない人はいないだろう。その城藤一族の一人である美麗は城藤グループ会社の社長令嬢だということは大学では有名だった。その型破りな言動と人形のように整った容姿と共に。





「パーティー?」

「そう! 城藤美麗が主催の! ダイニングバーを貸し切って朝まで好きなだけ飲み放題!」

友人はベンチに座る私に興奮気味に報告する。

「私はいいや」

「何で即答? あの城藤美麗が主催なのに」

「だって興味ないし。バイトで忙しいしお金ないし」

「参加は無料だよ」

「え? 無料? 嘘でしょ?」

「ほんとだって。しかも大学からバーまで送迎付き!」

パーティーに興奮する友人に引きながら私は城藤美麗に呆れていた。金持ちの道楽は年々規模が拡大している。去年は親しい友人を招待して別荘でハロウィンパーティーをやったらしい。噂ではモデルやアイドル、芸人も来ての盛大なものだったらしい。

飲み会はもう学生のレベルを超え、別荘でパーティーは当たり前、お店を貸し切るのは当たり前だ。

そのうち城藤未美麗はテーマパークも貸し切れそうだ。いや、貸し切れそうなのではなく、その気になれば金にもの言わせて貸し切ることなんて簡単に違いない。

「私はいいから一人で行きなよ」

「お願い! 一緒に行って! 一人じゃ不安だよ……」

「何それ。不安なパーティーなんて行くのやめなよ。どうせ男女入り乱れて抱き合って、お酒で酔いつぶれて、違法薬物吸ってハイになるんでしょ? 私だって怖いよ」

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