きみの愛なら疑わない
海外ドラマなどでよく見る、学生だけしかいないのに派手で社会から切り離された別世界のようなパーティー。それがこの日本で、目の前で実現している。
「海外かよ……」
「何?」
「何でもないよ」
私の声は会場の音楽にかき消される。今なら城藤美麗のどんな悪口を言っても誰にも聞こえないし追い出されないだろう。
「ねえ、私端っこにいるね……」
振り向きながら言うとそこに友人の姿はなく、少し離れたテーブルで知らない男の子と既に飲んでいた。
「早すぎでしょ……」
呟いたのと同時にマイクのスイッチが入るキーンとした音が響き、バックヤードからマイクを持った城藤美麗が出てきた。
「みんな今日は楽しんでー!!」
既に酔っているであろう彼女は下着かと思うほどの薄着で、いつも以上にテンションが高い。
そういえばこれは何のパーティーなのだろう。どこにも目的が分かるような掲示物はないし、城藤美麗からも説明はない。早くも帰りたくなった私はフロアの隅に置かれたイスにただ座っていた。
どれくらい時間がたっただろう。お酒も飲まずに私は会場の様子を眺めているだけだった。友人は男の子と楽しそうに飲んでいる。こんなことなら今日はバイトに行けばよかった。行けば数千円の稼ぎになる。ここにいても一銭にもならないのに。
暑くなってきた私は外の空気を吸おうと立ち上がった。
バルコニーに出ると夜風が気持ちよかった。
はぁ……もう帰りたい……。
手すりに寄りかかって真っ暗な空を眺めた。こんな所で無意味に時間を過ごしてバカみたいだ。
「うっ……おえっ……」
どこからか嫌な音が聞こえてきた。
「っ……うっ」
飲みすぎて気分が悪くなった子が近くにいるのかもしれない。
まったく……ここは呆れる人たちばっかりだ。
私は声のする方へ耳を澄ます。バルコニーの真下に誰かいるようだ。