きみの愛なら疑わない
「大丈夫ですか!?」
大声で真下にいる誰かに話しかけても返事は返ってこない。
私は会場に戻ると人をかき分けて階段へ行き、駆け下りてバルコニーの真下を探した。出口を左に行くと植え込みがあり、その影に誰かがうずくまっているのが見えた。
「大丈夫ですか?」
私は恐る恐る近づいた。すると酸っぱいにおいが鼻をつく。こっちまで胃がムカムカしてきた。
「あの……」
近づいてやっとその人が誰なのか分かった。下着かと思うほどの薄着。綺麗に纏められていた髪が今はボサボサだ。
「おえっ……」
城藤美麗の体が震えると不快なにおいは一層強くなった。飲みすぎたのか、液体を吐き出す音が不快感を呼び起こす。
「はぁ……」
溜め息をつくと「大丈夫ですか?」と声をかけた。本当は関わりたくないけれど流石に心配になる。
私が城藤美麗に近づくと今度は後ろに気配を感じた。
「美麗? いるの?」
振り向くと美麗の取り巻きの一人が探しに来た。そして吐いている美麗を見ると「うわっ」と口を覆って逃げていった。
「薄情なお友達」
私は呟いて美麗の後ろに屈むと背中をさすった。
「大丈夫ですか?」
「…………」
驚いて私の顔を見た城藤のご令嬢はメイクが落ちてパンダ目になり、顔面蒼白でとても美人とは言えなくなっている。
「あの……お水持ってきましょうか?」
「どうして?」
「え?」
「どうして美麗に親切にするの?」
「どうしてって……具合が悪そうだから?」
「…………」
ご令嬢は目を真ん丸に見開き私を凝視している。
「お金?」
「はい?」
「お金目当て?」
「は? バカですか?」
私は思わず目の前のバカ女にバカと言ってしまった。お金目当てなはずがない。