きみの愛なら疑わない
「本当にありがとう……」
歩き出す私に美麗はもう一度お礼を言った。
「…………」
振り返ると先ほどよりも顔色が良くなった美麗が笑っている。
「……どういたしまして」
それだけを言ってお店を出た。友人に『先に帰る』とメッセージを送ると駅まで歩いた。
今夜の城藤美麗との出会いがこの先の人生を一変させることに、このときの私は気づかなかった。
◇◇◇◇◇
「みーつっけたっ! 足立ミサ!」
「なん……で……?」
中庭を歩く私の視線の先にはベンチに座って足を組む城藤美麗がいた。その姿はまるでモデルのようで、同じ女なのについ見惚れてしまう。
「あなたを探すのは簡単だったよ」
ショートパンツを穿いた美麗は美脚を完璧なポーズで惜し気もなく晒し、私に向かって微笑んでいる。
「パーティーのときのお礼がしたいの」
「いや……いいです、お礼なんて……」
失敗したと焦る。美麗は嫌みな私に仕返しをするつもりなのかと思った。
「そんなこと言わないで。行くよ」
「行くってどこへ?」
美麗に腕を掴まれ無理矢理大学から連れ出されると車に乗せられ、意外にも高級レストランに着くと食事を奢られた。
テーブルに座った目の前には見たことのない名前も分からない食材を使った料理が並べられた。今まで食べたことのないそれらは庶民である私の喉を通らない。
「ミサちゃんてどんな漢字書くの?」
「美しいに袱紗の紗です」
「美紗ちゃん……美麗と似てるね」
「どこがですか?」
「同じ美しいって漢字が入ってる」
「はあ……そうですね」
美麗はニコニコと私を見つめる。ワイングラスを手に持つ美麗は絵に描いたように美しかった。