きみの愛なら疑わない

「ねえ、美紗ちゃんは不自由だって感じたことある?」

「え?」

「美紗ちゃんみたいな子は美麗のこと嫌いでしょ」

「いえ……そんなことは……ないです……」

嘘をついた。そんなことはある。
ただ、嫌いというよりは生きている世界が違う人種だと思っている。関わることも避けたいし、近くに居たいとも思わない。でもそれを本人の前では言いにくい。

「気を遣わなくていいよ。美麗を介抱してくれてた時はもっと強気だったじゃない」

「それは……」

もう会うこともないと思ったから。

「美麗にバカって言った人は初めてだよ」

「…………」

目の前のバカ女に会ったことを今とても後悔している。きっと城藤の財力を駆使して生意気な態度の仕返しをされるのかも……。

「すみませんでした!」

慌ててテーブルに頭を打ち付ける勢いで謝ると「嬉しかった」とご令嬢は言った。バカと言われて嬉しいと返す美麗に驚く。おまけに私に笑顔まで向けている。

「今まで美麗に本音をぶちまけた人なんていなかったから」

そう言ってご令嬢は寂しそうな顔をして窓から夜景を眺めた。

「みんな美麗本人じゃなくて城藤のお金が目当てなの」

返す言葉が浮かばず、私は出された高級料理をひたすら飲み込んだ。

会計は全て美麗がカードで払った。といっても実際は美麗自身の金ではなく親の金だ。金額を書いた紙を見ることもなくカードを差し出す美麗には更に呆れた。

レストランを出ると美麗の使用人だという男性が運転する車が迎えに来た。車種は分からないがこの車が高級車だというのは何となく分かる。
自宅まで送ってくれると言う美麗に甘えて乗り心地がいいシートに座っていた。

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