きみの愛なら疑わない
「美紗ちゃんさ、美麗の友達になってよ」
「え? 私がですか?」
突然の申し出に戸惑った。
「城藤さん、あの……」
「美麗でいいよ」
「美麗さん……何で私なんかと?」
「みーんな美麗を傷つけることは言わないんだよね。美紗ちゃんみたく本音を言ってくれる子と付き合いたいの」
「…………」
このぶっ飛んだ思考の人と凡人の私が友達……。
「勘弁してください!」
私は横に座る美麗さんに頭を下げた。
無理に決まってる。城藤美麗と友達になるなんて。
「あははは、そうそれ!」
横に座る美麗さんは私の答えに手を叩いて爆笑している。
笑い事ではない。この人と関わると毎日疲れてしまいそうだ。
自宅前で降ろしてもらい送ってくれた礼を言うと、「また明日ね」と次回も会うことが決まっているような別れの言葉を押し付けられる。
こうして私は見事に城藤美麗の取り巻きの一人になった。
◇◇◇◇◇
城藤美麗は自分を無敵だと勘違いしているようなところがあった。
食事に行くことになると必ず『城藤』の名を出して高級店を予約する。
服を買いに行けば値札を見ずに手に取り、「美紗ちゃんにはこれが似合う」と頼んでもいないのに私の服まで買ってしまう。
クリスマスパーティーは高級ホテルのレストランを貸し切って参加者の部屋まで用意した。そしてそのパーティーに着るドレスを私の分まで用意する。我が家の経済状況では手に入れるのもレンタルするのも困難な額の高級ドレスだ。私がどんなに断っても強引に押し付ける。
美麗さんに手に入れられないものはないのだろうが、それは美麗さん自身の金ではなく全て親の金があればこその話だ。城藤の財力がなければ美麗さんはただのワガママな女なのに。