きみの愛なら疑わない
「ねえ美紗ちゃん、このネックレスあげるよ。この間着たワンピースによく似合うでしょ?」
そう言ってブランドのネックレスを断ったのに押し付けられた。私に似合うはずもないネックレスを首にかけると、見た目以上に重たく感じる。
食事も買い物も、美麗さんといれば私は一切お金を使うことがなかった。
美麗さんが私の経済状況をどこまで知っているのかは分からない。それでも私は奢りの食事やプレゼントにいつの間にか頼るようになっていた。美麗さんに払ってもらうことが当たり前、呼び出されたら会いに行くのが当たり前になった。
会う度に自分と比べてしまい、美麗さんの育った環境、親の財力が羨ましかった。
このままでは自分自身がだめになる。
母から隠すように部屋に溜め込んだ高級品を見て、そのことにやっと気づいた。こんな関係は間違っている。
私は美麗さんとの『友人関係』を継続しつつ、金銭面で依存しないよう距離をとった。
美麗さんの方は凡人の私が新鮮なのか、些細なことも私に打ち明け意見を聞いてくれるようになっていた。
「お見合いですか?」
「そうなの……親がそうしろって」
大学に程近いカフェで美麗さんは深刻な顔をしてコーヒーカップに口をつけた。
「何とかっていう会社の御曹司らしいよ」
「何とかって何ですか?」
「さあ」
美麗さんは相手自体に興味はないのか、年齢も知らないし写真すらも見たことがないという。お見合いしなければいけないという現実に困惑しているようだ。
「お見合いしたらその人と絶対に結婚しなきゃいけないんですか?」
「100パーセント結婚だね」
形だけのお見合いをする。でも実際は断ることなどできない決められた縁談だそうだ。
美麗さんが結婚する。私だって驚いている。遊びまくっている美麗さんが家庭に入るなんて似合わなすぎて笑ってしまいそうだ。