きみの愛なら疑わない
「いつかはこうなるって分かってたんだけど……」
「嫌なんですか?」
「当たり前でしょ」
裕福なお嬢様が親の決めた相手と結婚する。よくある話だ。美麗さんが受け入れようと受け入れまいと。
「美麗さんってほんとワガママですよね」
私は美麗さんに遠まわしなことは言わない。この人には本音でぶつかった方が好かれるのだ。
「だって不細工だったらどうする?」
「顔なんてどうでもいいじゃないですか。相手もお金持ちですよ。これからも変わらず遊んで暮らせます」
「でも結婚する相手くらい自分で選びたい」
「選びたいって……」
何を言っているのだこのワガママお嬢様は。いつだって自分のやりたいようにやってきたのだから、お金を出してくれている親の決めた結婚くらい受け入れてもいいものだろう。深いことは知らないけれど、今までの男関係も派手なようだし。
「美麗さん、今までずっと好き勝手やってきたのに」
「それも反抗だったんだよね」
「え?」
「城藤に生まれた女はみんなそう。だいぶ前から政略結婚は決まってたの。それに高校も大学も進路はいつだって決まってた」
美麗さんの話にイラつく。私がどれだけ頑張ってこの大学に入ったと思っているのだ。努力もしないで遊んでいるだけの能天気なお嬢様を心の中で罵った。
「親の決めたことにずっと従ってきたけど、少しでも困らせたくて親のお金で豪遊してみたりさ」
やっぱり美麗さんは私とは様々な価値観が違う。生きている世界が違う。
「でも結婚は好きな男としたいじゃん。親の決めた相手は嫌なの」
美麗さんは全てを持っている。手に入れられないものはない。だから美麗さんの望む相手だってきっと手に入れる。