きみの愛なら疑わない
慶太との結婚を望む美麗さんは両親を説得した。城藤の人間が平凡な男と結婚するなど有り得ないことなのだろうが、美麗さんは御曹司とのお見合いをすっぽかし、慶太と結婚できないなら死ぬと騒いだそうだ。
美麗さんがお見合いを拒否したことによって城藤の会社にはダメージがあったようだが、美麗さんはこれだけは譲らなかった。
「慶太は美麗のお金になんて全然興味ないんだって。結婚したら慶太の会社の近くに住もうって言ってくれたの」
「美麗さんの性格を好きになるなんて慶太っていい人ですね。心が広いのか、もしかして鈍感?」
「もうっ! 美紗ちゃん辛口」
「慶太は美麗さんのどこを好きになったんでしょうね」
「んー……美麗が慶太を大好きなところじゃない?」
「なんですかそれ」
惚気に顔をしかめつつ、一生働かなくてもいい環境を捨てて慶太を選んだことを尊敬した。そして慶太が美麗さんを選んでくれたことが嬉しかった。
慶太を認めず反対していた美麗さんの父親もついに折れて慶太と会うと、その人柄を気に入って結婚を許した。そこからはあっという間に式の日取りも会場も決まっていった。
「婚約指輪見せてくださいよ」
「まだ買ってないの。美麗が欲しいのは慶太のお給料じゃ買えないし」
私は呆れたけれど美麗さんが羨ましかった。
「美麗さんは結婚しない方がいいと思います」
「何それひどい」
「だって美麗さんが主婦になるなんて想像できない。慶太は絶対苦労する」
「もうほんと美紗ちゃんって酷いよね」