きみの愛なら疑わない
「だから俺はいつか自分の意思を貫けるくらいの力を手に入れたいんです。結婚は自分の好きな人とできるくらいに。そうしてずっと離れない。そのためなら社長になる勉強もします」
いつの間にかマンションの前に着いてしまって私は足を止めた。そして優磨くんも私の横で止まる。マンションの玄関ホールから漏れる明かりに照らされた優磨くんは初めて見る凛々しい顔になっていた。
「足立さん、俺と付き合ってください」
目を見開いた。
彼の気持ちを何となく知ってはいたけれど、こんなに早く伝えられるとは思っていなかった。
「足立さんを守れるくらいの男になりますから」
こんなにも真っ直ぐに、心を込めた告白をされたのは初めてだ。優磨くんの目は今にも泣きそうに赤い。私の返事を待って緊張しているときの顔だ。
もしも私に好きな人がいなかったら、こんな素敵な告白にOKしてしまったかもしれない。でも私は優磨くんの気持ちに応えることはできないし、応える資格もない。
「優磨くん……ごめんなさい……」
目が潤んできた。私の言葉を聞いてギュッと目を閉じた優磨くんが霞んで見え始めた。
「ごめんなさい……私は……」
「慶太さんが好きなんですよね」
驚いて瞬きすると涙が頬を伝った。
「気づいてましたよ。足立さんが慶太さんをどう思ってるのか。気づいてて、それでも俺の気持ちを伝えました」
「そう……なの?」
「慶太さんも分かりやすいですけど、足立さんも分かりやすいです。いっつも慶太さんのことを見てましたから」
それほどに私は浅野さんを意識して見ていたんだろうか。
「だから気持ちを伝えられれば満足です」