きみの愛なら疑わない
「最近ダルくて食欲もないし、痩せてドレスのサイズが合わなくなったら困るもん」
ぷうと頬を膨らませて私に怒っていることをアピールしてくる。その辺のアホな男なら整った顔で可愛らしく膨れられたらワガママも許してしまうのだろう。が、生憎私は女であり美麗さんの人生のアドバイザーだと自負している。間違っていることは教えてあげなければいけない。
「美麗さんは慶太と結婚するんですよ? 自分で決めたことでしょ。あんだけ城藤家を騒がせて慶太を選んだんだから匠と別れて家庭に入ることに専念した方がいいですよ」
結婚できないのなら死ぬとまで騒いで選んだ男なのだから。
「そうなんだけど……」
美麗さんは起き上がってベッドの端に腰掛けた。
「美紗ちゃん……美麗は慶太と結婚する」
「そうですね」
「でも匠も好きなの」
「はい?」
「慶太は美麗をちゃんと一人の人間として見てくれるの。間違ったことはきちんと叱ってくれるし、美麗を守ってくれる」
美麗さんはちゃんと分かっている。慶太は『城藤』美麗とは見ない。家柄で美麗さんを選んでいない。
「でも匠は美麗を求めてくれるの。ワガママで何も出来なくても、今の美麗を愛してくれる。こんな美麗でも必要だって言ってくれるの」
言いたいことは分からなくもない。匠だってありのままの美麗さんが好きなのだろう。でも私には匠が慶太を裏切ってまで付き合う相手とは思えない。
「慶太は美麗を変えようとしてくれるの。自立した女の子に。美麗も慶太に相応しい子になれるように頑張るつもりなんだけど……」
慶太は間違っていない。美麗さんを愛して変えようだなんて心が広くて感心してしまう。