きみの愛なら疑わない
「そうですね、産みましょう。匠の子供の可能性が高いです。匠と一緒に育てるべきだと思います」
ゆっくりと美麗さんの頭に染み込むように言葉を吐いた。これは私の願望でもあった。
美麗さんは慶太の人生をダメにしようとしている。慶太だけじゃない。二人を祝福する家族や大勢の招待客を裏切る行為なのだ。今から式を中止にするとしたらかなり大事だ。けれどそうするべきだと思う。
「妊娠してることを知ってる人は他にいますか?」
「ううん、美紗ちゃんだけ……匠も慶太も知らないし、親にもまだ言ってないの」
「そうですか……今はまだその方がいいかもしれないですね」
「美麗は慶太と結婚する」
「え?」
はっきり言いきったことに目を見開いた。私が慶太との結婚をやめるべきだと言ったばかりではないか。
「匠の子を慶太の子だと偽って育てるんですか?」
美麗さんは頷いた。
「今度慶太とゴムつけないでエッチしたら大丈夫。正確な日にちなんて慶太にはわからないよ」
いつも何も考えてなさそうな美麗さんから悪知恵を聞かされて鳥肌が立つ。お腹に匠の子供を宿しながら慶太とセックスするなんて気持ち悪い。
怒りと呆れと嫌悪で美麗さんを引っ叩きたい衝動にかられる。
「私は結婚を祝福できません!」
思わず大きな声が出てしまった。美麗さんの秘密を知ってしまったのに、慶太との結婚を祝えるはずがない。関係者全員に対する裏切りだ。
「慶太を傷つけます……産まれてくる子だって、いつか父親が慶太じゃないって知ったらどうするんですか!」
「慶太の子かもしれない……」
「そんな……」
「そうだよ、慶太の子だよ! 慶太とエッチしたときにゴムに穴が開いてたかもしれないし、匠とは安全日にしたもん」