淋しがりやの心が泣いた
「あ!  いつの間にかいないじゃないですか。央介(おうすけ)くんは? どこ行ったの?」

「ちょっとレモン切らしちゃって。買い出しを頼んだ。うち、最近めちゃくちゃメニュー増やしたから、慣れてなくていろいろ切らすんだよ」

 すぐ帰ってくるから大丈夫だよと、付きっきりで相手をするマスターはやさしくて良い人だ。
 だけど央介くんが買い出しから帰ってきたら、瞬時にバトンタッチすると知っている。

「やっぱり南ちゃんには央介だよね。アイツ、南ちゃんのことめちゃくちゃ好きだから」

「好きなんて嘘です。ただのおべんちゃらです。リップサービスの一種です」

「そんなことないよ。それ聞いたらアイツ落ち込むよ?」

「………」

「今日もアイツに送らせるから、とことんここで愚痴りなよ」

 そんな風にやさしくされると、またじわりと目に涙が浮かぶ。

 この隠れ家的なバーのマスターも、そこで働く央介くんという私と同い年の男性も、すごく気さくで温かくて良い人だから、ここはいつの間にか私にとって“愚痴を聞いてくれる場所”になってる。


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