淋しがりやの心が泣いた
 なにかあるたびに、ここに来てはグチグチとネガティブ発言をしたり、時には泥酔し、腹が立った出来事への暴言を大声で繰り返しているみたい。
 酔ってフラフラになったら、いつも家が近所だという理由で央介くんが送ってくれている。
 そんな感じで、この店にはかなり迷惑をかけているように思うのだけど、今のところまだ出禁にはなっていない。

 私にも話を聞いてくれる女友達はいる。
 だけどここで愚痴を吐き出すのは、なんだか感覚が違うのだ。
 大きな広い心で受け止めてくれてるような……
 そんな感覚に陥るこの空間も好きだし、マスターと央介くんの人柄が好き。

「マスター……」

「ん?」

「私……好きです」

 目の前のマスターがグラスを拭きながら固まっている。
 私、酔ってなにか変なこと言っただろうか。

「南ちゃん、今の、どういうこと?!」

 沈黙で固まる私たちの間に、突然割って入ってきたのは央介くんだった。驚いた表情で目をパチパチとさせている。


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