GREEN DAYS~緑の日々~
 翌日の夕方、夏穂は校舎の軒先で口を尖らせながら鞄の中に手を突っ込み、折り傘を探していた。途端、夏穂の顔に大きな黒い傘の影が映る。顔を上げると国人が自分の傘を夏穂に差し掛けていた。

「部活休み?、ああ、そういや雨だね」

 国人は夏穂の問いかけを無視し、夏穂の手を引っ張って校門を抜けて行った。夏穂の戸惑いの表情。その様子を洸が二階の窓から見ていた。そしてそっと微笑んだ。



二人で並んで砂利道を歩く。俯きながら。何も喋らずに。国人は唇を噛み締めた。

「お前、まだ一人なの」

夏穂は俯いた。

「青木、とかは…」

夏穂は何も答えなかった。雨粒が夏穂の顔に当たる。国人は夏穂のそんな横顔を見つめると、傘をぶっきら棒に夏穂に渡し、そのまま一人、全速力でやみくもに駆け出した。夏穂はその場に立ち竦んだままでいた。
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