鉢植右から3番目


 それともそれとも!もしかしてすぐに忘れられていて、なかったことにされているかも!・・・・それも、じゅーうぶんに、有り得る・・・。ああ、そうだったらマジで泣ける。

 一人で勝手にがっくりして、私は両親の住む家まで向かう。

 電車の中は朝も早くと言うのに家族連れが多かった。

 ・・・そっかあ~・・・皆、お盆で帰省かなあ~・・・。それか、家族旅行。子供達のキラキラした笑顔と弾ける笑い声で電車は騒がしかった。

 いつもなら気にならないそんな声も、今日の私には眩しいぜ!もう、ヤツとの子供は期待出来そうにないしな。あの調子じゃねぇ。

 どんよりとした私とは裏腹に見事な夏晴れ快晴の青空の下を、私は一人で家に帰った。

「何であんた一人なのよ」

 当たり前だけど、開口一番母親が言ったのはそれだった。

 ・・・お帰り、があってもいいと思うのですが。

 私は顔も上げずに後ろむきに手だけをひらひらと振って言った。

「ヤツは繁忙期でも私は休み。だから主婦は休業」

「何言ってんの、あんた」

 忙しいダンナさんをそこで支えてこその主婦でしょうが!と主婦歴40年の母が後ろで怒鳴っていたけど、無視した。

 そして元自分の部屋に入ったら、そこは綺麗に片付けられていて、既に私の部屋ではなくなっていた。母親の衣服の詰まった箪笥や鏡台なんかが引越ししてきていた。娘が無事に嫁いだと思って家の片付けもしたのだろう。

 ・・・・くっそう・・・結婚とはこんなに恨めしいものだったのか。


< 101 / 143 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop