鉢植右から3番目
いつかはくると覚悟していたけど、8日目で母親が切れた。
「あんた、一体いつまでいるの!?」
昼御飯が終わっても居間で寛いでいた私の前に仁王立ちだ。
多分、すぐに帰るだろうと思っていたのだろう。もしくはヤツが迎えにきてくれるかと。ところが婿はいつまでも迎えに来ないし、娘はここから仕事に行っている。電話をしている様子すらないし、これは一体どうしたことだ!とずっと思っていたんだろうなあ~。
手に取るように判るぜ・・・などと考えながら、私は適当にはいはいと返事をした。
「・・・繁忙期は泊り込みも多いから、ゆっくりしておいでって彼が」
嘘だけど。ヤツがそんな事言ったら天から槍が降る。それはそれで見物かもしれないけど、実際あったら痛いし困る。日本中が大パニックだよ。
母親はそれで一瞬勢いが削げたけど、また改めて腰に手をやりガミガミ言い出した。
「それにしたってゆっくりしすぎでしょう!もう帰りなさい!嫁に行った子がどうしていつまでも実家でダラダラしてるのよ!」
異議有りー!!そこには思いっきり手をあげたいぞ!事実、私は右手を高く挙げた。何がダラダラだ、あんなに娘をこき使っておいて。
私はぶーぶー文句を垂れ流しにしたが、母がこの顔をするともう一歩だって譲らないことは経験から知っていた。
だから仕方なく荷物をまとめた。
「・・・じゃあ、帰る。お父さんに宜しくね」
膨れっ面のままで言うと、やっと眉間の皺を伸ばした母親が、一生食えってか!ってくらいの保存食を入れた紙袋を押し付けた。