鉢植右から3番目
2、呼び方のアレコレ。
アパートの階段を上りきる。そして廊下の一番奥の角部屋。
玄関前に置いた鉢植の棚は、もう日が落ちて明りが足りずによく見えない。だけど、指で触れると葉っぱはしっとりと濡れていた。
・・・・あら。世話、されてる。
無責任にも放置したのは形だけのダンナだけではなく、実は鉢植達も同じだ。そしてどちらにより罪悪感があったかと言うと、こっちの方。
だってダンナは自分の世話は自分でするけどこの子達は出来ないんだしね。そう思って、戻った時には干からびてカラカラの鉢植達を想像していたのだ。
「・・・これは、嬉しい驚き」
ヤツに礼を言わねば。ドアを見詰める。深呼吸をして、鍵を差し込んだ。もしかして、チェーンも閉められていたらどうしようと一瞬考えた。
ガチャリと音がしてノブをまわし、私は久しぶりの部屋に入る。開けた途端に顔に当たったのはクーラーで冷やされた空気とごま油の匂い。
・・・おお、うまそうな香り。
そろそろと靴を脱いで上がる。否応なく鳴り響く鼓動を出来る限り無視して、居間のドアを開けた。
台所に立っているヤツが、チラリとこっちを見た。
「・・・ただいま」
私の言葉に軽く頷いて、うんと言いながら菜ばしで鍋をかき回している。
つい、荷物をその場に置いて近づき、それを覗き込んだ。
「―――――ラーメン?」
「そう」
「・・・何も具材がないけど?」
「いつもこれ」