鉢植右から3番目
――――――――おおっと!!そこは聞くのか!ま、出て行く前の晩は他の男を捜すと叫んでいたわけだしね。私が戻るとは考えてなかったのかもしれないなあ・・・。姿を見たって別に驚きもしてなかったけど、怒りもしてなかったしな。
私は無意識に溜まった唾を飲み込んで言った。
「・・・しない。した方がいい?」
ここでうんと言われたら再起不能。そんなことを思いながら、声が震えないようにして聞く。
するとまだじっとこっちを見ていたヤツが、それ、と言った。
「はい?」
上ずった声が出た。
「それ?」
どれ?と私が何をさされているのかが判らずに首を捻ると、ヤツが言った。
「結婚指輪、だろ?それしてるから、他の男を見つけたのかと思って」
おお!ぴったり嵌りすぎですっかり忘れていた母の指輪に気付いていたのか!坂田君に見せてから、そのまま買い物をしたりして付けっぱなしになっていたのだった。
私は苦笑して、違うの、と言う。
「これはうちの親のよ。今のあんたとサイズが多分一緒でしょうってくれたのよ。父親のもセットで」
ネックレスにしている父の指輪も服から出して見せる。
「ぴったりでしょ?昔はお母さんも指のサイズが7号だったなんて驚き。今からは想像も出来ないわ~」
たっぷり肉厚になった母の指を思い出してつい笑う。
「帰る途中で前の会社の同僚に会ったの。それで、結婚してるって言っても信じなかったから、ちょうどいいやってつけてそのままだった」