鉢植右から3番目
ヤツは右手で袋を持って、左手はカーゴパンツのポケットに突っ込んで歩く。
だから私は左手に袋を持って、ヤツの左側に回った。
前を歩くヤツの横に並んで歩調を合わせ、がしっとヤツの左手首を掴んだ。
「―――――ん?」
高い場所から私を見下ろして、表情で何?と問いかける。
私はにーっこりと企んだ笑顔を返し、掴んだ手首を引っ張ってポケットからヤツの左手を引っ張り出した。
そして手を繋ぐ。
もう無理やりだ。ぐいぐいと指を突っ込んで、私のより大きくて骨ばった手の平に潜り込んだ。
どんな反応をするかなと思って見ていたけど、ヤツはちらりと繋いだ手を見ただけでまた前を向いて歩いていた。嬉しそうとか照れてる感じもなかったが、嫌そうでもなかった。いつもの淡々とした表情だった。
それにホッと緊張を解いて、私は見上げて言う。
「・・・嫌だったら外すけど?」
ヤツは前を見たままでぼそっと言った。
「・・・別に。でも、熱いな」
うふふと笑う。そりゃあね、夏だからねえ~って。しばらくそのままで歩いたけど、本気で熱くて手のひらが汗で気持ち悪く、結局こっちから手を離す。
「・・・あー、熱かった・・・」
小さな声で言うと、苦笑していた。
「変な人」
「うるさい」
「そもそも何で繋いだの」
「お黙り」
部屋に帰るまで小さくて下らない言い合いをしていた。