鉢植右から3番目


 だから私は毎日を楽しんでいた。

 ヤツの実家へ行っての嫁の仕事だって慣れてきたし、ようやく友達にも結婚したんだよって触れ回り始めた。

 たまに寂しい薬指には母の指輪を嵌めて隙間を埋めてもらう必要があったけど。

 でも、いいや。

 十分、私は幸せだって、思っていた。

 だから気付かなかった。あまりにも毎日はするすると流れていて、それは突然の変化みたいに思えたのだ。

 9月に入ったある日。

「――――――おお・・・?」

 私はバタバタと部屋中を駆け回る。そして鞄を全部ひっくり返して、洗濯物を掘り起こしていた。

 ・・・ない。ないっす、鍵が。

 うんざりして自分で散らかした周囲を見回す。あっれー?どうしてよ。昨日仕事から帰ってきたときはあったんだから、絶対この家の中にあるはずなのに。

 いつも鍵を置く場所を丁寧に再度見回す。・・・ないな。

「おっかしいなあ・・・」

 銀行と市役所と郵便局とに用事があって、もう一度に済ませようとパートが休みの今日を待っていたのだ。

 なのに、鍵がない。

 結局前失くした鍵も見つからなくて、やつに頭を下げて鍵を貸してもらい、スペアを二つ作って私の分と鉢植の下に隠す分とに分けたんだった。

 くっそ~・・・出る気なくす・・・このアクシデント。

  絶対家にあるんだと判っているんだから見つかるだろうと簡単に思っていたのに、ちっとも見つからずにイライラする。


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