鉢植右から3番目


「・・・あー、もう!」

 決めた。私は立ち上がる。

 鉢植のスペアキーを今日またコピーして、この紛失はヤツにばれないようにしよう。そのうちまたひょっこりと出てくるだろう。失くしものなんてそんなもんだし。

 玄関から外へ出るとキラキラとお日様の光。つい笑顔になって、育てている鉢植達を見回した。

 今日も皆元気に育ってるわ~。来年は夕顔とかもいいかも・・・。今度はベランダに、緑のカーテンを夕顔で作るとか・・・。いやいや、それだったらゴーヤの方がいいかも。

 考えながら、目的のサルビアを愛でる。赤い花びら、その中には甘い蜜がある。綺麗、これは長い間咲いてくれるから、本当に玄関前が華やぐわ~。

 うふふと笑いながら、その中段の棚、右から3番目のサルビアの鉢植を持ち上げる。

 ここに、スペアキーが――――――――・・・

 と、思ったら、鍵の下には小さなカードが置いてあった。

「・・・ん?」

 なんだこれ。手のひらにすっぽり入ってしまうほどの小さなカードはそれなりに長い間置いてあったのか、少し汚れていた。

 頭に盛大にクエスチョンマークを打ち上げながらとにかくと鍵とそれを取って鉢植を戻し、そのままでくるりとカードを裏向ける。

 そこには文字が。

『本棚一番上の右端の本』

 ――――――――――は?

 ぱちくりと目を瞬く。

 えーっと、何でしょうか、これは。どうしてこんなのがここにあるの。ってか、ここには私とヤツしか住んでないんだから、これは当然ヤツの仕業よね。


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