鉢植右から3番目
いつもの足音がドアの前まで続いてきて、やがてガチャリと音がした。
私はそれをヤツの部屋のヤツのベッドの中で聞いていた。
うっすらと目を開ける。
夕方から、ここで眠ってしまったんだ。ついここに寝転んだら、ヤツの香りに包まれて、そのままうとうとしちゃってた。妙に安心する香りだった。
香りの主が帰ってきたんだな、今、何時なんだろ・・・。動くのが億劫で、もうそのままでまた目を閉じてじっとしていた。
玄関から居間へのドアが開いて、足音が止まった。
ドアが開いている自分の部屋に気付いたのだろう。
どくん、と私の鼓動が耳の中で跳ねた。
タオルケットの下、胸の前で握り締める両手。その左手薬指には彼から貰った指輪。
シンプルなシルバーのリングには幅の狭い線でゴールドが走り、内側にはピンクダイヤが嵌めてあった。
紛れもなく、結婚指輪だった。
ドサっと荷物を置く音。そして足音はこの部屋の入口へ。ヤツは真っ暗のままの部屋の中へ進み、ベッド横のサイドランプをつけた。
「都」
声に、ゆっくりと目を開けた。
私は横向きから仰向きになって、目をこする。
「・・・お帰り」
「うん」
「お腹、空いた?」