鉢植右から3番目


 ヤツはベッドに腰掛ける。タオルケットの外へ出した私の指を見ているのが判った。

 珍しく、口元を緩めて目も細める。

 ・・・・おやまあ、笑ってる、この人。

 私はそれをぼんやりと眺める。

 自分の仕掛けがようやくちゃんと発動したのを確かめて、どういう気持ちなんだろう。聞いてみたいけど・・・答えは貰えなさそうだな~・・・・。

 ヤツが低い声で言った。

「・・・空いてる。でも、先に・・・」

「はい?」

「新婚初夜を経験しようかと」

 私は両目を瞬いた。

 ―――――――嘘。本当?これは幻聴?まだ夢の中?いや、でも、確かに聞いた。私、確かに今・・・・

「――――――――・・・面倒臭くないの?」

 思わず、ぽろりと口から言葉が零れた。

「うん」

「本当に?」

「本当に」

「全然?」

「全然」

「ちっとも?」

「ちっとも。――――――何、笑ってんの」

 私は腹の底からこみ上げる笑いを噛み殺すのに必死になっていた。


< 130 / 143 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop