鉢植右から3番目
「・・・何でもない」
何とかそう答えると、ヤツはヒョイと肩をすくめて言った。
「もういいか?・・・・まったく、面倒くせぇな」
「止めるの?」
「いいや」
ヤツはにやりと笑った。サイドランプの明りで瞳が煌いて見えた。
「面倒臭いから、抱いてもいいですかなんて許可を取ったりはしない」
何よそれ、どういう宣言よ。
くくくく・・・と笑いが漏れる。そしてそのまま、落ちてきたやつの唇を受け入れた。
面倒臭がり男の中身は、驚くほど情熱的だった。ええ!?マジで!?などと思えたのは最初の頃だけ。予想を裏切る過程と結果に私はただ流されるだけ。
もしかしたらこの人は、一点集中型で物事への集中力が凄すぎるので、力を分散させる為に自分からやる気を潰しているのかも。世界に数人いる天才と呼ばれる人々は賢すぎるが故に先読みが出来すぎて疲れるので、普段は物凄く無口だと聞いたことがある。そこまではいかなくても、結局この人もそのタイプなのかも―――――――・・・・
でも考えられたのはそこまでだった。
その夜の間中、私の意識は飛びっぱなしだったから。
半年前のあの春の夜。
私達の物理的距離は約68キロ、心の距離はおおよそ地球1周分だった。
今現在の、この秋の夜。
私達の物理的距離はゼロ、心の距離も(多分)同じくゼロになった模様だ。