鉢植右から3番目


 部長はどこにいるんだよ、出てきて庇ってやってくれよ!そう思っていた。恋愛は一人で出来るものじゃないのに、どうしてあいつは一人なんだって。

 悔しかったんだと思う。

 不機嫌なまま戻った自分の机をガンと叩いたら拳が痛かった。

 俺は、同僚としてだけど、兼田が好きだったから。

 彼女はいつでも背筋を伸ばして仕事をしていた。


「久しぶり~、偶然だねー」

 そう言って笑う兼田は、髪が伸びていた。

 今では32歳になっているはずだ。軽やかな笑顔だったから、安心した。

「時間あるならお茶しないか?俺喉カラカラなんだ」

 そう言うと、角のカフェを指差したから、二人で入った。

 適度に冷やされた店内は、天国みたいだった。

 ふう~、と大きく息を吐いて、肩の力を抜く。

 ・・・ああ、極楽だ。


 格好いい店長がいるんだよ、と嬉しそうに言って、確かにやたらと美形の男性をじっくりと見詰める兼田が面白かった。

 そうそう、こんなノリだった、と思って。


 やっと汗が引いて、アイスコーヒーを飲む。口に含んだら少しある苦味がやたらと美味くて、思わずグラスを取ってマジマジと見てしまった。

 ・・・美味いな、これ。


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