鉢植右から3番目
可哀想な私はがっくりと肩を落とした。
おう!じゃあ出て行ってやるよ!あばよ!って啖呵切って出て行けたらどんなにか楽だろうか・・・。
だけども独身の友達は今や離れた土地に住んでいるし、その他は皆自分の家庭を持っている。深夜1時に、親に縁を切られましたと転がり込めるわけもないし、個人的な貯金だってほとんどない。
・・・・横暴だ。理不尽だ。21世紀の世の中にこんなことがあってよいのか!?
台所が騒がしいからと、父親が起きてきた。
そしてうな垂れる私とふんぞり返る母親を見て、どうしたんだと尋ね、母親が説明をした。
すると無口な父親は、私に近づいて肩をポンと叩いて言った。
「とりあえず、明日本人に会ってから悩んだらいいじゃないか」
定年を迎えてから嘱託で仕事を続けて家を支えている父親を、呆然と私は見上げる。
専業主婦の母と、社会人になって見事に色んなことに失敗し、戻ってきた娘の為に働いているお父さん。
長年サラリーマンをしていただけあって、さすが、一番大事なことをちゃんと見抜いた上で、真ん中を取る案を出してきた。母の意見も立て、一応、私の逃げ道も用意されている。
しかも、この場がちゃんと収まるから自分は眠れる。
・・・確かに、そうだよね、お父さん。ショックが効いていたのもあって、私はそれ以上の抵抗も出来ず、こっくりと頷いたんだった。
それを見て母親はにやりと笑い、父親はお水を飲んでまた寝に行った。
そんなわけで、神の啓示を受けたらしい二人の母親の企みで、翌日私は急遽夫となる人とデートをすることになったのだった。
あーあ。
神様、まったく、余計なことをしてくれたもんだぜ。
啓示なんてものは、もうちょっと大事な場面でつかうものじゃないのか?私は真っ暗な春の夜空を見上げて、そんなことを考えたんだった。