鉢植右から3番目


「・・・・」

 私の沈黙の意味には気付いたらしく、はあ~とため息をついて説明を始めた。

「つまり、結婚しない理由がないんだ。兼田さんのことはほとんど知らないから嫌う理由もない。そして、この話を受けると、現在いろんなところからいつ結婚するんだと言われまくっている状況が改善するし、職場の、アイツはホモかもしれないって微妙な噂も払拭できるし、まあ、親も喜ぶ。苦手な家事を折半してくれたら助かるし、経済的にだって一人よりは二人のほうがいい。・・・判る?」

 残念ながら、非常によく判った。

 私はゆっくりと頷く。

 色んな人から「ご結婚は?」と聞かれることも鬱陶しいし、「早くしないと子供産めなくなるわよ」って余計なお世話な攻撃からも少しは避けれる。ぶっちゃけ経済的には助かるし、彼と同様、私だって漆原大地なる人物については何も知らないから、嫌う理由は今のところない。

「・・・ううむ」

 私の唸り声に、ヤツは続けた。

「だから、提案するつもりでいたんだ。実のところ」

 うん?

 顔をあげてヤツを見た。長い前髪の間から私をじっと見ていた。

「・・・まあ、契約結婚てやつだ。お互いの利益の為に、夫婦という制度を利用する。そこに愛がないのは申し訳ないけど、言ってみれば同居人になるわけだ。法律上は夫婦となれば、税金その他、色々得もする」

 私はヤツをガン見した。

 その時、料理が運ばれてきて、ウェイトレスさんの侵入で微妙な場面で会話は一時終了となる。


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