鉢植右から3番目
目の前で湯気をあげる和風スパゲッティに視線を落とし、私は呆然と考えた。
――――――要するに、同居人。
同じ家に住み、お金と家事とを分け合い、後は干渉なし。ただし、夫婦という形を取る、と。
前に座る男は、平然と食事を始めた。
呆けていた私は、つられてフォークを操る。そして熱々のパスタを感動なく黙々と食べた。きのこ、大根おろしと大葉、パスタ、きのこ、大葉、パスタ、大根おろし・・・
口に入れるものをいちいち頭の中で呟く。
ちょっと混乱してる?いーえ、別に混乱するようなことは何もなかった。やつの話はハッキリしている。つまり、自分の環境を考えたら、母親の話にのっても悪くないって言ってるんだ。
そこに愛がないのは申し訳ないけど。
さっきの言葉が頭を掠める。
そう、愛はない。しかも、普通の見合いと違ってそこから愛を始めましょうってノリでもないらしい。ただ単に、一緒に住むってだけ、らしい。
・・・・愛、が欲しいわけじゃない・・・け、ど・・・。
割り勘男だってナルシストの医者だって異常性癖野郎だって、別にあの時点で愛や恋があったわけじゃあない。
だけど、彼等は結婚して一緒にこれからを生きていこうと思う女性を探していた、という点が違った。
出来れば愛し合いたい、そして守っていきたいと、女性に対して考えをもっているってところが。
そこが、大きく、もの凄く違った。目の前にいる、都合6歳から18歳まで同じ学校に通ったよく知らない男とは。
こいつが探しているのは、同居人だ。