鉢植右から3番目


 2時間ほど熟考してこの同居にあたって提案したことは、これ。

 ・給料のそれぞれの4分の3を家計の通帳に入れる(生活の全てはそこから出す)
 ・食事は私が作るけど、後は基本的には自分のことは自分でやる
 ・共同部分の掃除は交代でやる
 ・ご飯の有無や大事な決定事項はボードにメモする

 ヤツはちらりと見て、うん、と呟いた。それで終わり。何の質問も不満もなかった。

 ほんっとーに興味ねえんだな~と私は呆れた。

 俺がしなきゃならないこと教えて、と言われたので、私を扶養に入れる手続きと、結婚を知らせる必要がある知人や親戚のリスト作成を頼んだら、翌日には終えてきたから驚いた。

 仕事は、早いらしい。

 でもそれを言うと、ひらりと手を振って、後に残すと面倒だから、と言いやがった。

 すぐに背中を向けた男にこっそりと親指を下へ向けた私だ。

 ・・・・ま、やることやってくれたらそれでいいんだけど。

 とにかくそのアパートで目覚めた初日の一日は、私はそんな感じで馬のように働いたんだった。

 そして、疲れ切って、にんじんも食べずに台所の床に座り込んで寝てしまった馬なのでした。

 うっすらと色々な夢が出たり消えたりしていたように思う。

 トントン、と肩を叩かれる感触にハッとして目を開いた。

「・・・・」

 目の前に、無言で男が居た。

「うひゃあ!!」

 私は叫んで背中を壁に打ち付ける。それはかなり痛くて、ちゃんと私の目を覚まさせてくれた。


< 33 / 143 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop