鉢植右から3番目
契約結婚であると知っている唯一の友達からは「逃げればいいんじゃないの?いつ解消するかわからないんでしょ?」という全力ダッシュ推奨の言葉を、その他の友達からは「避けて通れない嫁の儀式よ!挙式しててもこれはいつか起こるの。ファイト!!」という励ましを貰った。
電話を切ってからも、しばらく悩んだ。
具体的な対処法はパラパラと教えて貰ったけど、でも――――――――
そしてため息をついて―――――――実家に電話をした。
髪は綺麗にまとめて、微笑みを絶やさず、進んで手伝いに出ること。
色んな女達に言われた指示を頭の中で繰り返しながら、それを確実に実行していく。これは仕事だと思って頑張ろう、そう自分には言い聞かせていた。
嫁の、役。それが仕事。
あんたの失敗は、大地君の評価に繋がるのよ!あんたを貰ってくれた漆原家の顔に泥を塗るんじゃないわよ!という母親の声が蘇る。
顔に泥?ヤツの顔に泥なら、別に気にしないからいくらでもぶつけて・・・いや、なんなら塗りたくってくれてもいいが、仮面夫婦だと知らずに本当によく接してくれている義理の父母には感謝こそすれ恨みはないから頑張りたい。
そんな心意気でのぞんだのだ。漆原家の法事に。
漆原大地の祖父の13回忌だそうで、兄妹の多かった祖父の、甥やら姪やら一番下の妹とその家族やらで親戚の大きな家は満員だった。20名くらいは、いた。びっくりした。
その中で持参したエプロンをきて、私はマメマメしく働く。一度聞いただけでは理解できない繋がりのある女達に混じって、微笑みを絶やさずに働きまくった。
なんせ、歳はそれなりにいってはいるけど新参者。別に子供もいないし、お願いね、といわれる雑用は山盛りあった。