鉢植右から3番目
忙しなく廊下を通りながら障子の隙間からちょろっと見たら、ヤツは親戚の男衆に混じって淡々と酒を飲んでいた。
嬉しそうに私のことを話しているのは母親と父親で、その嫁を貰ったはずの息子は興味ないって文字を顔に書いてる状態だった。
ふーん、と観察する。
・・・お酒、飲むんだ。
家で飲んでないから知らなかった。アルコール口にするんだ、やつは。そうかそうか、じゃあ今度ビールも買ってみようかな、などと。
無表情で淡々と飲んでいて、集まりにも宴会にも見事に興味がなさそうだった。
料理の大皿を運んでいくと、大地の大叔父です、と自己紹介したおっちゃんが、酔っ払った赤ら顔で私の腕をトントンと叩いた。
「ええーっと、あんた、都さん、だっけ?」
私は営業スマイルで微笑む。
「はい、都です」
つられたようにおっちゃんもニッコリ笑って、酒臭い息で言った。
「大地のどこに惚れたのかな、うん?」
チッと心の中で舌打ちしてしまった。でも笑顔は崩さなかった。偉いぞ、私!
惚れてねーよ、どうして私が惚れる方なんだよ、こら、おっさん。と思ったけど、そんなことはおくびにも出さず、ケラケラと笑いながら言う。
「聞きたいですかー?人のノロケ話は退屈ですよーう」