鉢植右から3番目
居酒屋で2年もバイトしてたのだ。酔っ払いのかわし方は取得済みだ。ヘラヘラと笑いながら、ちゃんと返事はせずに少々話相手をして差し上げた。
テーブルを挟んで前の席でひそひそ話していたおば様達が、次はこっちよとばかりに身を乗り出す。
「同級生で結婚の割にはえらく長い間かかったのねえ。そろそろ子作りもしなきゃ、すぐに高齢出産よ~。35歳越えちゃったらしんどいわよ、育てるのも」
・・・・来た。
無意識に、目を細めてしまった。すぐに気付いて眉間の皺も伸ばす。
こういう時は、得てして女性の方がえぐい発言をしたりするものだ。覚悟はしていたけど、20名以上の親戚が集まった席で酒の肴にするには露骨な話題だな・・・。さて、どう対応すれば角もたたず、彼女達の好奇心も満足させられるか・・・。忙しく考える。
その間にもおば様達の、親戚一同に加わったばかりの新しい女に対する攻撃はやまない。
「最近の若い人は仕事を優先にしたりするからねえ、どうしても出産が遅れるのよねえ~」
「あら、でもこの方は社員さんで働いているのではないんでしょう?じゃあ産めるわよねえ」
「まだ新婚じゃないのお~、しばらく二人で居たいわよねえ、ね、あなた?」
私は口角を吊り上げてしおらしい顔を作って言う。
「そうですね、でも赤ちゃんだけは授かりモノですから」
おばさま達の目が煌いた。うふふふと嬉しそうに笑っている。獲物を見つけた目だった。
ちらりと遠くに座るヤツに視線を向かわせると、グラスを口に運びながらこっちを見ていたらしく、目が会った。