鉢植右から3番目

2、大地の好き嫌い。



 歩きながら後ろでまとめていた髪をほどく。

 引っ張られていた頭皮が解放されて風が通り、一瞬で気分が爽やかになった。

 川原へは真っ直ぐで、3分くらいで着いた。恐らく1級河川だろうなあ、と思う幅の広い河川敷にはサッカーの広場もあるらしく、小学生のチームが試合をしているようだった。

 電車が高架を通り、夕方のピンク色の空を風が駆け抜ける。

 ふんわりと柔らかい気分になって私は一人で微笑む。

 いいなあ、こんな大きな川がある町って。

 草原の斜面に足をのばして座り込み、犬の散歩をする人や同じように川辺に座って寄り添う若いカップルや、小さな子供を遊ばせる母親なんかをぼーっと見ていた。

 ランニングする人。

 それを眺める私。

 言われた言葉がまだ胸の中で痛かったけど、その存在も忘れることが出来そうないい気分だった。

 この世の中にはどうしようもないことがある。

 その内一つは、子供を産むことだ。

 自分だけでは出来ず、ちゃんと育つかどうかも賭け。元々産めない体かも知れないし、その全てが、誰のせいでもなく運の一言に尽きるのだな、と判っていた。

 空の端がゆっくりと赤を濃くする。

 そろそろ法事も終わって解散しているころかも。私も戻ったほうがいいのかな。

 だけどもうちょっと――――――――・・・


< 51 / 143 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop