鉢植右から3番目
「・・・お疲れさん」
後ろから声が降ってきて、驚いて振り向いた。
「・・・ああ、ビックリした」
両手をズボンのポケットに突っ込んで、上の道路の端からヤツが見下ろしていた。
風が髪を揺らして目にかかり、それで鬱陶しそうな顔をしているのだろう。真っ直ぐに前の空が赤くなっていくのを見ている。
「・・・終わったの?戻ったほうがいい?」
私が聞くと、視線を下げてゆっくりと隣まで降りてきた。
「ほとんど帰ったけど、挨拶する必要はないからゆっくりしていいって親が言ってた」
成る程、で、あんたは彼女を迎えにいきなさいって指令が出たのね。
少し後ろの斜面で同じように座り、やつがポケットから缶コーヒーを出した。
「飲む?」
「あ、これはどうも」
有難く頂く。一日がかりの仕事を終えて、ちょうどコーヒーが欲しいなあと思っていたところだった。
早速開けて、喉を鳴らして飲んだ。
「ああ、美味しい。風も気持ちいいし、いいところだねー、ここ」
にっこりと笑って振り返ると、ヤツは無表情のまま呟いた。
「それは良かった」