鉢植右から3番目


 それにしても悪かったと口に出すのが嫌で唸ってたんじゃないだろうな。すんなり謝れない男か!

「・・・大丈夫よ。独身の時に言われてた言葉なんかより、だいぶマシ」

 小さく笑うと、やつはそれを見ているようだった。背中に視線を感じた。

「突っ込まれなかったか?」

「はい?」

 だらだらとヤツは言った。

「・・・指輪、何でしてないのって」

 ああ。私は苦笑した。

「言われた言われた。一発目に。結婚指輪は?って。でも女の人は仕事中や家事中には邪魔だって外している人も多いから、家事の間は外してるんです~とか適当に言っておいたけど」

 大切にしまってるんです~って言おうかと思ったけど、そんなにいいものなのね、一体どんなのなの?とか聞かれるとイメージ喚起力の弱い私は鬱陶しいので、そんな誤魔化し方をしたのだ。

 私たちは、同居人。なので勿論、指輪なんか買ってない。

 そこに気付くとは思わなかった。ってことは、ヤツも誰かに突っ込まれたんだな。

「誰かに言われたの?」

 うん、と頷いた。

「・・・職場とか、親とか。何で新婚が指輪してないんだって」

「それで?」

「そっちと一緒。普段は邪魔だからしてないって言った」


< 54 / 143 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop