鉢植右から3番目


 ・・・ま、そういうしかないよね。でも買ってないんだ、と正直には言わなかったんだ。私はそれに、ちょっと驚いた。こいつは興味ないから買ってないとかいいそうだと思ってた。

 ちらりと私を見て言う。

「要る?指輪」

「いらない」

 即答した。

 そしてゆっくりと苦笑する。

「・・・本当の結婚なら、やっぱり欲しいけど。私達は同居人なんでしょ?」

 揺れる前髪の間からこっちをみていたけど、何を考えているのかは判らなかった。

「誤魔化す必要があるときは、自分のファッションリング嵌めとくわ」

「うん」

 そのまましばらく風に吹かれていて、夕焼けが本格的にやってきたころ、腰をあげた。

 そして、荷物をとりに人気のなくなった親戚の大きな家に二人で戻った。

 子供に、指輪か!

 ああ・・・・結婚するって、いろんなことしなきゃなんだなあ!


「お父さんと大地は食べっ放しだろうけど、都ちゃんと私は働き通しだったのよ。軽く作るから、食べて行って~」

 とヤツのお母さんに言われ、正直、人に作って貰うご飯は有難いので、ヤツには確認もせずに、はい!ありがとうございます!と元気に頷いた。


< 55 / 143 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop