鉢植右から3番目
あらら?私はまた包丁を止めて、考える。
でも私は自分が結構ピーマンを料理に使うので、今までバンバン食卓に上がっていたはず。
ヤツは別に文句も言わず残しもしなかったから、嫌いなものがないんだと思っていた。
・・・ピーマン、嫌いだったんだ。
つい手元のピーマンをじっと見た。そして細かく細かく刻んだ。
パパッと簡単に作った料理を、女二人は勢い良く、男二人は酒のつまみ程度にして食べた。
ヤツはほとんど口を開かなかったけど、リラックスしているのが、いつもより柔らかい雰囲気で判った。アルコールの影響もあるのかもしれない。
たまに口元を緩めて笑いながら私と母親の会話を聞いていた。
9時すぎに、やっと自分達の部屋へ向かって歩き出した。
「お疲れさん」
前を歩くヤツが、ちょっとだけ顔を振り向かせて私に言った。
「はい、君もね。お疲れ様。いいご両親だね~、気が利くし、優しくて明るい」
「・・・何でこんな息子が、とか思っただろ」
「あ、バレた?」
自然な反応だと思うけどよ、あの親とこの子。違いが多いじゃんよ。
後ろをフラフラと歩きながら、そういえば、と話しかけた。
「君、ピーマン嫌いなんだって?どうして言わなかったの、毎日食べるの辛かったんじゃない?」