鉢植右から３番目

　頭だけで振り返って、ダイニングに入ってきた彼に声を掛ける。

「お帰りー。思ったより早かったんだね」

　ヤツは私を見て頷き、ポケットに突っ込んでいた右手を出して詰まれた段ボールと木材、散らばったネジを指差した。

「あれ何？」

　野菜炒めをフライパンで揺らしながら、私は嫌そうな声で答えた。

「ああ、邪魔だろうけどしばらく勘弁して。棚を買って、組み立てようとしたけど上手くいかなくて」

　ふーんと呟きながら鞄を置きに自室へ入り、頭を振って首を鳴らしながら出てきた。

　そして立ったままゆっくりと周りを見渡す。

「・・・これ、説明書は？」

「判読不可能で紙飛行機にして飛ばしてやったわ」

「・・・何、その勝ち誇ったような言い方」

「うるさいわね、私はこういうの苦手なのよ昔から！」

　ジャジャっと音を立てながら菜ばしで炒める。あとは高野豆腐と鮭のムニエル。段取りを頭の中で考えながら台所で動いていると物音が聞こえたから振り返った。

　ヤツが段ボールを畳んではしに避け、組み立て始めている。

「え？いいよう、自分で頑張るし、もうご飯出来るよ」

　慌てて私が言うと、ヤツはこちらを見もしないで言った。

「ここにあると邪魔だし危険。いいからご飯やって」