鉢植右から3番目


 営業や販売なら人と関わらなければならないから、力仕事を選んだんだろうなあ!

 それでこの体格か、と納得した。高校生の頃のひょろっとした印象は今ではがっしりとした印象にかわっている。それは力仕事で体に筋肉がついたからなんだな。

 野菜炒めがちょっと辛いな、と思いながら、じっくり前の男の事を観察した。

「・・・箪笥」

「は?」

 いきなり呟かれてマヌケな声が出た。

 ヤツはご馳走様でした、と手を合わせてから、前髪の間から私を見る。

「俺も部屋に箪笥欲しい。まだ殆ど段ボールから出せてない。何か買っておいて」

「・・・どんなのがお好みですか」

「荷物が入ればそれで」

「なら段ボールを重ねとけば?」

 また面白そうな顔をした。どうやら私のぶっきらぼうな返事はヤツの意表をつくらしい。

「それでもいいかと思って今まで何もしなかったんだ。だけどこれ――――」

 先ほど自分が組み立てた私の収納棚を指差す。

「いいな、と思って。こんなのでいいから」

 ちょうど手の届く場所においてあった通販雑誌をヤツの前にドンとおく。

「選ぶくらい自分で選んでよ」

 ヤツはあからさまにうんざりした顔を見せた。


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