鉢植右から3番目


「・・・それがメンドーだから、頼んでるんだけど」

 それが判ってるから、置いたんだけど。

 私はにやりと笑う。

「君の好みが判らないし、部屋に入ったことがないからサイズも測れない」

 どうぞ、というように片手で自室を指差した。・・・・入って測れってことかいな。

 憮然として睨みつける。なぜ私がそこまで。

「いや、だからね、好みがね」

「何でもいい」

「そんなこと言って、後で文句言われたら暴れるわよ」

「苦情は言わない。じゃ、宜しく」

 そう言ってヤツは立ち上がると食器を流しに運び、風呂場へ行ってしまった。

 ――――――――ああ?

 私は唖然とその後姿を見送る。また、丸め込まれてしまった・・・のよね、私?

 あの男、もしかしたらもの凄く頭の回転が速いんじゃないんだろうか。会話が誘導されている気がするぞ。

 で、結局私は初めてヤツの部屋へ入り、ざっと見回して、とりあえずモノトーンでまとめとけば問題なし、と大雑把にきめつけて、箪笥を置くであろう場所のサイズを測り、1時間かけて選んだ上で注文した。

 実は、ちょっと楽しかった。だけどそれはヤツには秘密だ。



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